Y.Hさん(団体職員)
2024年の春、展示会で試作品に触れた半年後、私はYUTAKURA BPの一ユーザーになりました。愛着のわく点字プレート、そして初めて手にする革製品も、すっかり日常に溶け込んでいます。
主に仕事場面での使用で、リュックには点字ディスプレイや点字の試料、昼食の弁当、ペットボトルのお茶などを入れています。日帰りの出張にも対応できるよう、予備の白杖や軽量な折りたたみ傘、歯ブラシなども収納しました。また、ショルダーバッグには、定期券などのカード類や鍵、小銭、財布、移動中に役立つICレコーダー、イヤホンなど、こまごまと入っており、こちらは外出の際、頻繁に持ち歩いています。
そんな私の日々の支えとなっている趣味についてご紹介します。
気分転換にスポーツセンターのプールで歩いたり、インターネットラジオの録音ソフトでお気に入りの番組を聞いたり、友人と食事に出かけるなど、手軽なものもいくつかありますが、歌や楽器演奏、プロ野球観戦には特に力が入ります。
幼いころからリトミックやピアノで音楽に魅せられ、物心ついた時に歌っていたのは、祖父母の実家でよく耳にしていた「乾杯」や「北酒場」でした。流行りの曲も聞きつつ、親しみやすい昭和のヒット曲に興味を示す子供でした。
盲学校(視覚支援学校)から地域の高校への進学時に点字ディスプレイを買ってもらうと、操作の練習を兼ねて、カラオケで歌う歌詞を少しずつ増やしていきました。20年近く経った今では500曲を超えています。高校時代は軽音楽部でドラムを担当し、歌とは違う角度から演奏に打ち込みました。
社会人となってから、鼻笛(はなぶえ)という楽器の存在を知りました。リコーダーのように口にくわえるのではなく、顔に押し当てて鼻息の強さと口の形を変えて音階を鳴らします。見た目は滑稽ながら、オカリナに似たきれいな音色でそのギャップが印象に残るようです。
また、ドラムの名残か、シェイカー(マラカス)やタンバリン、カスタネットなど、手だけではなく、足で演奏するタイプの打楽器もいくつか衝動買いしてしまいました。これらは、学校などでの講演で締めに歌とのセットで披露するとインパクトがあるそうで、嬉しい感想をいただきます。
コロナ禍では人前で演奏する機会こそ減ってしまいましたが、リモート合唱に参加したことで音を重ねるミキシング録音の方法を覚えました。事前収録でZoomなどでのオンラインイベントで披露する場が増え、新たな可能性の広がりを感じました。
その後、ラジオ番組でもマイクに向かうチャンスをいただき、何物にも代えがたい喜びになっています。
ある日、テレビ番組を見ていた母が、サックスのような形をした電子管楽器の「エアロフォン」が目に留まったと教えてくれました。そこで、楽器店での試奏を申し込み、早速出かけました。指使いは難しそうでしたが、初心者でもすぐに音が出せること、深夜でもヘッドホンを繋いで練習できること、何十種類もの楽器の音色が楽しめること、先生の素敵なお人柄にも背中を押され、現在もオンラインでレッスンを受けています。
中学生になってからは、ラジオのプロ野球中継も聞くようになり、20年以上の阪神タイガースのファンです。実況を頼りに野球のルールや用語を徐々に覚え、緻密な戦術や作戦、駆け引きの予想に面白さを見出しました。
貴重な情報源となるのが、点訳された選手名鑑や音訳されたプロ野球関係の雑誌です。
ネットニュースなどでタイガースの動向を追い、動画サイトで球場で歌うヒッティングマーチ(応援歌)を覚え、選手とコラボした弁当などの話題も仕入れて、コロナ禍の時期を除くほぼ毎年、数試合は球場に足を運んでいます。
阪神甲子園球場のサポートは大変心強く、事前に視覚障害があること、チケットの座席番号などを伝えておくと、指定の時間に最寄りの甲子園駅まで迎えに来てくださいます。片耳でラジオの実況を聞きながら、球場での臨場感を存分に味わいます。
通常、プロ野球の試合は平均3時間程度ですが、5時間を超える引き分け試合、ホームランで決着の付くサヨナラゲーム、大雨で打ち切られたコールドゲーム、そして、2023年には、ついにリーグ優勝の瞬間に立ち会うことができました。
これからも、YUTAKURA BPを携えて、沢山の思い出を刻んでいきたいと思っています。